2025.12.02
大型ボイラーや冷却装置、発電機といった大型設備の更新工事では、撤去の際に石綿(アスベスト)やRCF(リフラクトリ・セラミック・ファイバー)を含む廃棄物が発生することがあります。
これらはいずれも微細な繊維状の無機物であり、吸入すると肺がんや胸膜中皮腫などの健康被害を引き起こすおそれがあるため、厳格な管理と飛散防止措置が求められます。
しかし、廃棄物の性状や発生源によって法的区分が異なるため、現場では「何が特別管理産業廃棄物に該当するのか」「どのように処理すべきか」といった判断に迷うケースが少なくありません。
対応を誤れば、高額な再処理費用が発生するだけでなく、従業員や周辺住民への健康被害といった深刻な事態に発展するリスクもあります。
石綿の処理を誤るとどうなるか、典型的なトラブル事例
ここで、ある事例を紹介します。
新潟市中央区で実施された給水・消火設備の改修工事に伴い発生したアスベストの処理に誤りがあった。この工事では、令和5年11月に除去業者がアスベストを含む保温材(廃石綿等に該当)を除去し、石綿含有産業廃棄物と分別して保管していた。しかし、認識を誤った元請業者が保温材1袋、石綿含有廃棄物1袋、養生材等4袋の計6袋をまとめて収集運搬業者に引き渡してしまい、そのまま廃石綿等の許可を持たない処分場「エコパークいずもざき」へ誤って搬入された。その後、12月にアスベスト条例に基づく「廃棄完了届」を作成する際、関連マニフェストが存在しないことから発覚した。元請業者は速やかに行政へ報告し、該当廃棄物の撤去作業を開始したほか、処分場側は事業者に対し搬入停止措置を行い、地元集落、出雲崎町への説明も実施した。現在撤去が進められており、元請業者による費用負担は数百万円規模に上る見込みで、今後は事業者の石綿に関する知識向上や分別・表示の徹底が求められるとしている。
参考:新潟県環境局資源循環推進課 石綿含有廃棄物等の取扱いについて(廃石綿等の取扱いの注意喚起)
https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/451715.pdf?utm_source=chatgpt.com
この事例の内容を簡単にまとめると、元請業者の認識の誤りで、本来分別して搬出すべき「廃石綿等」を「石綿含有廃棄物」とまとめて搬出してしまい、許可のない処分場へ搬入されてしまった、というものです。最終的に、元請業者は数百万円をかけて撤去を実施。処分場は事業者に搬入停止措置を行い、地元への説明も行う事態となりました。
上記のような事態を避けるためには、石綿関連廃棄物の分別を徹底することが重要です。しかし、石綿やRCFの区分は「飛散性の高さ」という基準によって法的扱いが大きく異なるため、一定の知識がないと明確に分別することが難しいです。そのため今回は、主な区分を下記にまとめてさせていただきます。
石綿関連廃棄物の区分
廃石綿等
吹付け石綿や保温材、耐火被覆材など、アスベストの含有率が高く、飛散性も高い粉状・綿状のもの。廃棄物処理法で「特別管理産業廃棄物」に分類されており、他の廃棄物と混ざることがないように分けて運搬し、管理型処分場での埋立処分が義務付けられています。
石綿含有産業廃棄物
廃石綿等以外の石綿が含有している廃棄物のことで、スレート板やパッキンなど、破砕しない限り飛散しにくいもの。区分上は産業廃棄物として扱われますが、処理するにあたっては石綿含有廃棄物の許可が必要であり、破砕禁止や飛散防止措置の実施も必須です。
RCF
アスベストの代替として広く使われる耐熱性の高い人造鉱物繊維。
廃棄物処理法上の明確な規制はないものの、労働安全衛生法では「特定化学物質(第2類)」及び「特定管理物質」に指定され、IARC(国際がん研究機関)でも「グループ2B(発がん性の可能性あり)」に分類されています。
そのため作業時には、保護具の着用、飛散防止措置、作業記録の保存などが義務付けられています。
繰り返しになりますが、アスベストやRCFは「飛散性の高さ」によって区分が異なり、判断が非常に難しい物質です。
区分を誤った場合、先述の事例のように多額の費用負担が発生する可能性があります。
また、誤った取り扱いによって従業員や処分場周辺の住民に健康被害が生じるおそれもあります。
今回の事例では幸い深刻化には至りませんでしたが、より重大な事態につながっていた可能性も十分に考えられるということです。
迷ったら、専門業者に相談を
石綿やRCF関連廃棄物の処理には、法令の知識、安全対策、作業工程の管理など、実務に基づく専門的なノウハウが求められます。現場ごとに最適な対応を判断し、安全かつ確実に処理を行うには、専門業者のサポートを受けることも一つの手段です。
ミズノでは、大型設備更新に伴い発生する石綿・RCF関連廃棄物について、法令区分や廃棄物の性状を正確に見極め、現場での積込みから運搬・処分までどのように対応すべきかを的確に判断します。煩雑な手続きを委託できるだけでなく、法的リスクや現場の負担を大幅に軽減することが可能なので、お気軽にご相談ください。
アスベストやRCF含有廃棄物をどのように処理すべきかについてまとめてみましたが、いかがでしょうか。
対応を誤ると、たった一つの判断ミスが数千万円の損害や健康被害に直結する可能性もあります。安全と法令遵守を徹底するために、石綿含有廃棄物やRCFに関する注意事項を改めて社内で共有するとともに、処理を行う際には適正に取り扱えるかどうかをしっかりと見極めていきましょう。











